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牛首紬 加藤改石さんを訪ねて

2012.01.15

京都での仕入れを終え、琵琶湖畔を北上し
福井、岐阜、石川にまたがる白山山麓に位置する牛首村を目指しました。
以前から牛首紬が日本三大紬とか釘抜き紬と言われていることに疑問を持っていました。

商品説明と実際の牛首紬にズレがあったからです。
しかし昨年末ある御縁から、加藤さんの牛首紬を目にし、手に触れ驚愕。
いままでそれといわれていた牛首紬と全く別物の柔らかな
風合い、美しい艶だったからです。良いと思えるものだけを真摯な
姿勢で扱いたいと考えております私としては、
真実を確認せずにはいられませんでした。

 

このごろの豪雪が始まる前の1月中旬、それでも雪の壁が続く峠を越えた
その先の山の中腹に加藤さんのご自宅兼機業場がありました。

 

御歳90才とは思えぬかくしゃくとしたお姿でお迎えくださった
加藤改石翁のご案内でさっそく仕事場へ。

 

 

牛首紬の特徴はまず経糸に上繭、緯糸は玉繭(双子の繭)を使用しますが、
玉繭はおよそ千個に四個の割合でしか取れない貴重な繭ですが、
加藤さんは100%緯糸に使用しています。

 

 

また、風合いを生み出す糸紡ぎです。繭を83度の熱湯に入れ、そこから素手で延べ引きにして単糸の紡ぎ糸をつくります。単糸とは、鍋に入れられた80個の 繭、それぞれから出てくる糸を一挙にすくい上げながら撚りをかけられる糸のこと。円錐状に開いた極細の糸が空気を含みながら甘撚りされていくので光沢のあ る柔らかい糸にしあがります。

 

 

経糸の撚りは4、5回、なんと緯糸は撚りをかけていません。(単糸に対して複糸があります。10個の繭から一本の糸をとり撚りをかけその糸をまた10本か らげて撚糸したものが複糸です。空気の層を含まない硬くて節の少ない糸になります。)緯糸取りが三人、経糸取りが一人。そして出来上がる糸は機織り三人分 なのです。

 

枷にとる。その後、糸の段階で精錬される。

 

経糸の整経。

 

 

空気を含んだ扱いにくい糸を、丁寧にしっかりとケヤキでできた重厚な筬で打ち込み織っていきます。そこに軽くて丈夫といわれる理由がうまれるのです。出来上がる反物は、わずか年間300反ほどです。

 

できたてホヤホヤの白生地

牛首紬は二軒の工房が認定されていますが、本来の単糸100%で生産されている牛首紬は加藤機業場だけだったのです。(残念なお知らせですが、他工房は複糸も使用しています)
また、糸紡ぎから製織まですべてを一軒でするのは全国でも非常に稀なことです。

 

電柱が一軒のためだけに立っている、そんな山間で繭を育てもらい、平安時代から続く技術を守ることが人生と生きる加藤改石さん。清々しい生き方に感動した旅でした。

どうぞ、ご理解いただきお召しいただくことでのご支援を宜しく御願いいたします。